宇宙軍月基地・士官室
メフィーリア「何を読んでいる?」
エミリ「ん?士官学校の生徒の成績表」
メフィーリア「めぼしいのはいるか?」
エミリ「肝心なのは表面上の成績じゃないよ」
メフィーリア「?成績がいいに越したことは無いだろう?」
エミリ「そりゃそうかもだけど、僕の隊に入れるなら・・・この二人かな」
メフィーリア「アリシア・カーウィンと、レジーナ・スタームか。
成績は並ってとこだがその根拠は?」
エミリ「あくまで本人を確認してからだけど、この二人なら協調性も
ありそうだし、隊としての機能も損なわずにすみそうだから」
メフィーリア「二人とも女だが、それも加味してか?」
エミリ「二人とも僕の隊への入隊を希望してるみたいだしね」
メフィーリア「・・・まぁ、余分な心配は無いだろうからな」
エミリ「そりゃ、僕だって軍人である前に女の子なんだからさ。
馴れ合うつもりは無いけど」
メフィーリア「で、この二人はパイロットとして使うつもりか?」
エミリ「できるならね。パイロットが五人いれば戦略の幅も広がる。
まぁ、その分整備が大変だから整備士もほしいけどね」
メフィーリア「確かにな、フェルディナンド技術大尉と
その他数名では厳しいだろう」
エミリ「部隊員が動きやすくするのが部隊長の役目、だからバランスを考えて
人数調整しないと」
メフィーリア「私とアレックスがエミリを部隊長に推したのは
やはり間違いではなかった、ということだ」
エミリ「ふふっ、会って間もない頃はまるで信用されてなかったのにね」
メフィーリア「昔の話だ」
エミリ「まぁ、僕は女の子の中でも小柄なほうだしね。実力を示すことでやっと
信用してもらえるわけだけど」
メフィーリア「私が言うのもなんだが、時間はかかったな」
エミリ「そうだね」
メフィーリア「・・・エミリ」
エミリ「?」
メフィーリア「私はお前の部下であることを誇りに思う」
エミリ「どうしたの、突然」
メフィーリア「他の皆が全てそうだとは言わないが、ほとんどの者は戦争に
勝つために戦いをしている。だがエミリ、お前の目指すところは
ただ戦争に勝つだけではないだろう?」
エミリ「・・・」
メフィーリア「私はそこに惹かれた。そう、人類の新たな可能性を
見出そうとしている、その姿勢に」
エミリ「・・・僕は、そんな大それた事考えてないよ」
アレックス「俺も、メフィーリアと同じ意見だ」
エミリ「アレックス。いつの間に?」
アレックス「ノックしても返事が無かったからな。鍵は掛かってなかった
みたいだから入らせてもらった」
メフィーリア「人類は宇宙に出て、もっと変わるべきだと私は思う。
だが私にそんな力は無い。しかしエミリのやろうとしていることは
私もアレックスも手伝いたい」
アレックス「そうだぜ、だからもっと俺たちを頼りにしてくれ」
エミリ「・・・ありがと。僕はいいチームメイトに恵まれたみたいだね」
メフィーリア「ああ」
アレックス「その通りだ」
宇宙軍・士官学校
エミリ「・・・にしても、まさかこんな形でここに来ることになるなんてね」
アレックス「そうだなぁ。俺にはもう縁が無いと思っていたが」
メフィーリア「グラウンドで訓練しているクラスがある。見ていかないか?」
エミリ「そうだね。成績に現れない部分が光る人もいるかもしれないし」
パウエル「まず準備運動を行う。各自グラウンド10周から、始め!」
エミリ「お久しぶりです。パウエル教官」
パウエル「ん?おお、エミリとアレックスとメフィーリアか。
そういえば臨時講師として呼ばれたんだったな」
エミリ「ええ。相変わらずですね」
パウエル「ああ。全ての基本は体力から。体力があればなんでもできるからな」
エミリ「どうです?今年の生徒は」
パウエル「いやぁ、お前たちほど優秀な生徒はなかなかいないな。
お前たちの活躍は私の耳にも届いているぞ」
エミリ「そんな・・・僕たちはまだまだですよ」
パウエル「謙遜するな。お前たちの活躍は胸を張れる。
そうでなければその若さで中佐になんぞなれん」
エミリ「何故か僕は首脳陣に持ち上げられることが多いですから」
パウエル「まぁ、お前はほかの誰にもないものを持ってる。
操縦技能、指揮能力、どれをとっても優秀でなおかつ若い女とくれば
看板にしたいのもわかるがな」
エミリ「そんなもんですかね」
パウエル「そういうもんだ、軍なんてのはな。拠り所が欲しいんだよ」
エミリ「はぁ・・・」
パウエル「どうだ?今年の生徒相手に模擬演習してみないか?」
エミリ「いきなりですか?」
パウエル「ああ、決意の無い奴をふるいにかけたい」
エミリ「・・・わかりました。ただし僕たちの名前は
とりあえず伏せておいてください」
パウエル「ああ、そのつもりだ。準備に取り掛かってくれ」
エミリ「了解です、教官」
パウエル「さて、今日の訓練内容だが、急遽変更とし、模擬訓練を行う」
パウエル「対戦相手は三人。こちらはお前たち全員で行う」
パウエル「ルールは簡単、こちらの陣地にあるフラッグを
時間終了まで守りきるか、相手三人を撃墜状態にするかだ」
パウエル「開始は今から10分後、各員準備に取り掛かれ」
パウエル「これより模擬戦闘を開始する。時間は30分とする」
エミリ「それじゃ手筈どおりに、行ける?」
メフィーリア「ああ」
アレックス「任せろ。普段の演習じゃねぇことを教えてやるぜ」
パウエル「始め!」
エミリ「散開!援護する!」
メフィーリア「行くぞ!」
アレックス「おうよ!」
エミリ「相手は統率が取れてない。一気に決めちゃって!」
メフィーリア「任せろ、エミリ隊の力、思い知らせてやる!」
アレックス「メフィーリア!」
メフィーリア「ああ!」
パウエル「終了だ。結果は残念だが気を落とすことは無い。
彼女ら三人は現役のパイロットだからな」
エミリ「どうも。先ほどの演習で指揮を取っていたアーサー艦隊旗下
エミリ小隊隊長のエミリ・アーシュラントです」
メフィーリア「同部隊員のメフィーリアだ」
アレックス「アレックス・リンドブルムだ」
パウエル「彼女らは一年前この学校を卒業し、第一線で戦うパイロットたちだ。
今は臨時講師としてこの学校に来ている。
いろいろ教えてもらうといい」
パウエル「ただし、これが実戦であったならば、諸君らは全滅している。
この模擬戦で恐怖を感じたもの、パイロットとして戦うことに
無理を感じたものは今からでも遅くは無い」
エミリ「覚悟の無い人に入隊先は無い。それを踏まえた上で今後は訓練に
励んでもらうしかない。早い話が覚悟の無い人は
辞めたほうが身のためだってこと」
メフィーリア「おい、エミリ・・・」
エミリ「部隊に入れば命を懸けなきゃならない。生き残ることが
できるか保障は無い。その覚悟ができている人は
いったい何人いるんだろうね」
パウエル「・・・つまりはそういうことだ。解散」